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人形に情を。学生たちの底知れぬ力を見た、感動の舞台を終えて。

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今回、文楽教室の発表会で、見事な演技を見せてくれた学生たち。

前回の記事はこちらから。

母(お弓)と子(お鶴)の情愛をえがく「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」を演じた4名から、舞台後の感想を聞きました。
彼らの素直な言葉から、躍動感あふれる演技がどうやって作られていったのかがわかります。

   一部 お鶴役:松永 希美(小学6年)さん
   一部 お鶴役:飯島 陸(中学2年)さん
   二・三部 お弓役:冨木 義之(高校3年)さん
   三部 お鶴役:森 和輝(高校2年)さん (以下、略称)

 

―発表会はいかがでした?10日間という稽古期間は短かいと感じましたか。

冨木 全力出せたし、この舞台に立ててよかった。

 1つ課題をクリアすると、1つまた課題がでてくるので、時間はどれだけあっても足りない。

松永 わ~イケメン(笑)私は今回初の上級クラス、やっぱり「情」の表現が大変だった。

飯島 初級クラスは基本的な動きの型を覚えて、上級クラスは動きで「情」を表現するから大変だよな。

―人形から悲しみや驚く表情が見えるから驚いたよ。先生の指導は厳しかった?

飯島 厳しかった。でも愛がある。

全員 そうそう、そこに愛があったね。

―先生方の指導の中で、印象的だったのはどんなことですか?

冨木 やっぱり、「情」じゃない?

飯島 人形の「頭」の使い方、その目線。自分はこっちを見ているけど、人形は別の方向を見ていたりもして。親子で紐を引っ張り合うシーンでは、大人と子どもの身長さを考えて、斜めに見上げるかたちをしっかりとらないと。11

 先生が言うには、「1に目線、2に目線。3,4がなくても5に目線。」

冨木 目線から、情がはいってくる。

―母のお弓と、子のお鶴、それぞれ演じ方の違いはある?

 自分が考えるのは、お鶴にはこうやってっていう演技・型があって皆同じ演技に近づくのだけど、一方で、お弓はいうなら「演技がない」。要するに、型にプラスして自分なりにアレンジしなければいけない。どう泣くか、どう目線を動かすか、色々試すなかで「それいいね!」と言われたものをどんどん演技に取り入れていった。3年間同じ役をやったけど、毎年別のお弓さん。

―まさに、進化するお弓!演者が自ら考え、試行錯誤して人物像を創りあげていくんだね。

飯島 「自分で考える」というのも、課題だった。

 実は冨木くんの演技から取り入れた演技もあって。先生の指導も必要なんだけど、やっている人の演技を見ていることも勉強になる。

冨木 自分はお弓役が始めてだったから、森くんにこうした方がいいんじゃない?と色々教わって有難かった。

―自分でなく人形で観客に伝えるわけだけど。

自分と人形の関係って、皆どういう感覚でやっていたの?

飯島 自分がお鶴と思うしかない。私は8歳の女の子よ、という感じ。そのために本番は頬紅塗ったり口紅塗ったり、出来るだけ近づいて。

松永 私は髪を結んでお鶴ちゃんにちかづいていた。

飯島 自分は髪がない・・・(笑)

 練習のときも「自分の気持ちができたらはじめなさい」って先生に言われて。自分のタイミングで「お願いします」と言って音をだしてもらう。

冨木 とにかく役に近づける。最初から気持ちができていなかったら、「やりなおし」って先生達に言われる。

松永 見抜かれているんですよ。

 あと一回とおして終わろうと言っていても、うまくいかないと「もう一回!」ってなる。終わる時間が伸びるけど、自分としてもここで終わりたくない!ていうのがあって。

飯島 そうやって続けていくうちに、自分の課題はどんどんクリアされていくから、達成感があった。

―日本の伝統的なものに実際に触れて、伝統芸能などへの見方はこれまでと変わった?07-2

 

飯島 関連するものに目がいくようになった。テレビでプロの演技を見ると、ああ、この人はこう考えて首を動かしているのかな、目線の動き一つでもこう見ているのかな、とか考えるようになった。

 一回、テレビ番組で「これ自分も(短いバージョンで)やった!」という経験があった。やることによって気にするようになるし、考え方もかわってきた。

松永 この教室には兄と姉が先にやっていて、あなたもやるよねっ?と、半分圧力で自分も始めたのだけれど(笑)。今までお兄ちゃんの演技を見に行ったりしていたから、入る前から知識だけはあった。

―何も知らずにやるのと、事前知識があってやるのとは違うと思うよ。

飯島 上級は手の細かい動きが増えたから大変だったよね。

 正直、練習中はみんな大丈夫?と心配だったけど。本番は何これ、すごい!って思うくらい違って。舞台袖から見ていたけど、正面から見たいと思ったくらい。うまい演技されると、うわ~っと圧倒されるし、悔しいし、俺もそういう風にやってみたい!と思う。

―じゃあ来年が集大成だね。皆はこの経験から、次の目標や何かに活かしたいと思っていることはありますか?

 来年は忙しくてどうなるか分からないけど、裏方や、今は団員の方がしている文楽やその演目の解説(司会)をしたい。自分がこういう思いで演技していたというのがあるからこそ、観客には「ここに注目してみて下さい」って伝えたい。

飯島 僕は、能や狂言とかに興味が出てきて、来年の夏休みには歌舞伎に行ってみようかなと思っている。

冨木 今高3だから卒業だけど、のちには今回の修了生のように一人で三番叟をすることになるかも。笑 舞台にあがるのもそうだけど、舞台にあがらなくても舞台を支えていくこともしたい。・・・なんというか、充実した夏休みだった。

飯島 うん、いいよな。こういう夏休みって。

 教えあう分、仲良くなるし、学校違っても学年が違っても、一緒に遊びに行ったりしてる。この体験大人文楽教室から輪が広がって、これから先にもつながっていくのかなって。

冨木 ここで終わりの関係だけじゃない、また修了生として声をかけてくれるといいな。

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